高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(79)

第7部・おいしい出会い(9)
昆布 「らしさ」重視した具材

 炎天下、揚げたての味を求めて長蛇の列ができた。五日に高岡市のウイング・ウイング高岡で開かれた「たかおか昆布祭り」(富山新聞社後援)で、「昆布コロッケ」の無料配布が人気を集めた。「コロッケと昆布は絶妙の組み合わせだ」「高岡の特産になる」など来場者の評判は上々で、作るのが追いつかないほどだった。

来場者に無料で配布された昆布コロッケ=5日、高岡市のウイング・ウイング高岡

●「ワインなどに合う」
 昆布コロッケを作ったのは、ウイング・ウイング高岡内の飲食店「ジャカッセ高岡店」。洋食系の料理が中心の同店が、昆布を使った料理に挑戦するのは初めてで、昆布祭りを主催した富山経済同友会の注文を受けて二カ月前から試作を重ねてきた。十数種類の昆布の中から選んだのは酢に浸してある千切り昆布で、酸味のきいた、さっぱりした味に仕上げた。試食では、昆布専門店の店主らからも「ワインやビールにぴったり」と太鼓判を押された。
 ジャカッセ高岡店はJR高岡駅に近いため、東京や大阪など県外から訪れる客が多い。昆布コロッケをメニューに加えることを検討しており、犀藤桂子店長は「昆布は富山とかかわりが深い。今後も富山らしさを重視したメニューを考案していきたい」と意欲的だ。

昆布コロッケを揚げる犀藤店長(左)

●全国トップの消費量
 北海道で採れた昆布は江戸時代、北前船の往来で薩摩や琉球にまで広まり、昆布の食文化は売薬商人を介して北前船航路ではぐくまれた。中でも富山県は、昆布巻きや昆布で巻いたかまぼこなど独自の料理が多く、昆布の消費量は全国トップクラスと言われている。
 昆布入りコロッケは、高岡市の国道8号沿いにある道の駅「万葉の里高岡」でも販売されている。直径十四センチの大きさで人気を集める「大仏コロッケ」の第二弾として、「キトキトこんぶコロッケ」の商品名で並ぶ。道の駅を運営するインサイト(高岡市)の取締役金子俊英さんが「コロッケによるまちおこしには高岡らしさが必要」と、市民の食生活に溶け込んだ昆布を具材にすることを思いついた。キトキトこんぶコロッケは、昆布のとろみとうま味が広がるよう仕上げてある。
 昆布祭りには、北海道や金沢、山形、新潟、福井、鹿児島、沖縄の七経済同友会が参加し、昆布を運んだ北前船の寄港地の縁を確認し合った。高岡の生活に根付き、全国的な広がりがある昆布のような食材を取り入れていくことは、高岡コロッケの全国発信に向けた戦略の一つとなる。

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