高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(68)

第6部・昼も夜も(8)
居酒屋 深夜でも揚げたての味

 JR高岡駅周辺は県外からのビジネスマンや観光客が行き交う。駅前の末広商店街にある「点心居酒屋 太陽」では六月中旬から「高岡コロッケ」をメニューに取り入れ、人気を呼んでいる。「牛肉と男爵いものサクサクコロッケ」の名前で並べたところ、店の看板メニューであるつけ麺と一緒に注文するお客が相次ぐようになった。
 開業四年目の太陽を切り盛りするのは店主の横岡卓詩さん(44)だ。コロッケを提供することになったのは駅前周辺を散歩していた時に「高岡コロッケ」ののぼり旗を見かけたのがきっかけ。店は午前三時まで営業しており、高岡コロッケ実行委員会に加盟する店では最も夜遅い。「深夜でもコロッケが食べられる店があってもいいはず」。そう話して横岡さんはコロッケによるまちおこしに加わった理由を説明する。
 横岡さんにとって印象的だったのは今年一月の日本海高岡なべ祭りに初登場した「コロッケ横丁」のにぎわいだ。昨年から二年連続でラーメンを販売しているが「明らかに人の流れが変わった。高岡コロッケの集客力を感じました」と振り返る。

お客にコロッケを振る舞う横岡さん(左)=高岡市末広町の点心居酒屋「太陽」

●冷めてもおいしい
 横岡さんが作るコロッケは一般的なコロッケよりも一回り大きく、重さは八十グラムと食べごたえがある。新鮮な油で揚げることで、衣がサクサクで冷めてもおいしいのが特徴だ。
 店内に掲げられた高岡コロッケののぼり旗を見た県外の観光客から質問されることが出てきた。横岡さんが高岡の取り組みを紹介すると、お客は自分の地元のご当地グルメについて語り合い、酒席が盛り上がることもある。深夜でも揚げたてを食べられる店として、コロッケのまちの発信に一役買っている。

居酒屋「太陽」が店を構える末広商店街

●人通り復活の力に
 高岡駅前から南北に走る末広商店街は空き店舗が目立ち閑散としているのが実情だ。青森県出身の横岡さんは、高岡で暮らし始めた二十年前との違いに寂しさを隠せないだけに、「駅前という場所で商売する以上、人通りを復活させるために少しでも力になりたい」と意気込む。
 駅前では五月一日の高岡御車山(みくるまやま)祭の時にもコロッケの屋台が登場して大勢の人を集めた。横岡さんは駅前の活性化の素材として、コロッケの可能性に手応えを感じている。

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