高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(67)

第6部・昼も夜も(7)
高岡古城公園 「釣り鐘」で全国発信

 高岡古城公園から新しい名物コロッケが誕生するかもしれない。園内にあるレストラン「西洋膳所『浪漫亭』三の丸」は、高岡が日本一の梵鐘(ぼんしょう)の生産地であることに着目し、鐘の形を模した「つり鐘コロッケ」を試作した。将来の全国販売をにらんで商標と意匠登録を申請中である。

菊岡さんが開発した「つり鐘コロッケ」=高岡市の高岡古城公園

●誇るものを活用
 考案したのは浪漫亭を経営する菊岡英夫さん(56)である。同店ではタラバガニをふんだんに入れたクリームコロッケが人気メニューだが、まちおこしにはその土地が全国で一番を誇るものを活用することが大事と考え、高岡にふさわしい独自のコロッケに知恵を絞った。
 円すい形に仕立てたコロッケの上にスパゲティを「つり手」に見立てて差し込み、釣り鐘の形を表現している。中身はジャガイモと牛挽(ひ)き肉のほか、「たかおか」にちなんで高菜とおからを使った。一つ一つを銀紙に敷いてケーキ用の箱に入れることで、おみやげや贈答品としての販売も視野に入れる。

店の窓からは緑豊かな高岡古城公園の景色が眺められる

●景色にみせられ
 東京都出身の菊岡さんは一九九九(平成十一)年、高岡市中心部に広がる高岡古城公園にみせられて開業した。季節ごとに表情を変える豊かな木々を窓から望み、時間がたつのを忘れて景色を眺める人も多い。市民に古城公園の良さを再発見させてくれる場所となっている。
 「ニューヨークのセントラルパークや東京の井の頭公園のように人を飽きさせない魅力がある」。こう菊岡さんは古城公園について語る。ただ、一方で金沢市の兼六園の軫徽灯籠(ことじとうろう)のような写真の撮影ポイントがなく、観光資源として十分生かし切れていないとの思いを抱いている。コロッケも同じで高岡の全国発信に十分活用されていないと考えており、「高岡を紹介したメモを入れて販売すれば、もっと名前が広がっていくはずだ」と構想をめぐらせる。
 つり鐘コロッケは普通のコロッケに比べて揚げる時間が長く、形作りにも手間がかかるため、大量生産には課題が残る。それでも菊岡さんは中身にバリエーションを持たせるなど試行錯誤に余念がない。新しいアイデアが次々生まれることがコロッケのまち高岡を楽しくしていく。

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