高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(63)

第6部・昼も夜も(3)
洋食店 「懐かしの味」に脚光

カニクリームコロッケをテーブルに運ぶ二上さん=高岡市末広町の「くらうん」

●カニクリーム、人気
 高岡コロッケのキャンペーンが始まってから高岡市内の洋食店ではコロッケを注文する客が着実に増えている。末広町の「自家焙煎(ばいせん)と洋食の店 くらうん」では、十五年前から販売しているカニクリームコロッケがにわかに脚光を浴び、一、二を争う人気メニューとなった。
 同店で四十年以上勤務する店員の二上明子さん(69)=同市野村=は「最近、コロッケをお客さんのもとに運ぶ回数が間違いなく増えた」と話す。
 カニクリームコロッケは新湊のベニズワイガニをたっぷり詰めた一品で、カニの赤とクリームの白の対照が美しく、口当たりも良い。カップルがオムライスを食べた後、一皿に二個載ったコロッケを分け合って食べる姿がよくみられる。
 カニクリームコロッケは料理長の得意料理の一つとして出されるようになったが、これまで人気はそれほど高くなく、存在を知らない人もいた。
 ところが「高岡コロッケ」の情報誌が創刊された今年二月、揚げるのが追いつかないほどが売れ始め、観光客から「どんなコロッケがありますか」と尋ねられることも出てきた。
 店主の小島治さん(53)は「他のメニューに比べ、コロッケは影が薄かったが、キャンペーンのおかげで魅力を再認識してもらえたのではないか」と分析する。

一番人気のカニクリームコロッケを揚げる大谷さん(右)=高岡市宝町の「オータニ」

●1日100個以上
 高岡市宝町の「レストランオータニ」ではカニクリームコロッケが一番人気だ。エビフライやハンバーグと合わせて注文する客が多いが、土日は一日で百個以上揚げることも出てきた。
 常連客から「今から行くからコロッケ用意しておいて」と電話で注文が入るほか、情報誌などを見て新顔のお客も訪ねて来るようになったからだ。
 大谷知治さん(71)、ひろ美さん(65)夫婦が店を切り盛りするが、二人はコロッケによるまちおこしがここまで広がるとは予想していなかった。ひろ美さんは「昔ながらの洋食屋さんの味を大切にしたい。精肉店のコロッケと食べ比べてもらえれば、違ったおいしさを楽しんでもらえるはずです」と期待を込める。
 洋食店は両親に連れられてよく食べたオムライスやカツレツなど、懐かしの味に出会える場所である。「高岡コロッケ」はその郷愁を誘う役割も果たしている。

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