高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(61)

第6部・昼も夜も(1)
フランス料理 奥深さ知る案内役に

 JR高岡駅南口そばのフランス料理店が今月から地元の食材を使った「高岡コロッケ」をメニューに取り入れた。敷居が高いと思われがちなフレンチと庶民の味のコロッケ。やや不思議な取り合わせだが、店側はフランス料理の魅力に触れる案内役として期待を込める。

地元の食材を使って仕上げた「高岡コロッケプルミエ風」を紹介する長田オーナーシェフ=高岡市駅南5丁目

●黒いコロッケ
 コロッケを取り入れたのは、高岡市駅南五丁目のフランス料理「ビストロ プルミエ」である。長田和洋オーナーシェフ(37)が「高岡コロッケプルミエ風」と題した料理を考案した。イカスミを混ぜ、見た目が真っ黒のコロッケと、マスを入れるなどして赤っぽく仕上げたコロッケの二種類が皿に盛られている。
 新メニューの評判は上々だ。お客は「なじみのある一品」と思って注文すると、フレンチの味付けを加えた珍しいコロッケが出てくる。お客は予想と違う味に喜び、その作り方をシェフに尋ねて仏料理に興味を持つようになるという。

●地元を元気に
 小矢部市出身の長田さんは二〇〇四(平成十六)年三月、JR高岡駅南口そばに店を構えた。当時、国宝瑞龍寺に近いものの南口そばが閑散としているのに驚いた。「せっかく縁あって開店した場所だし、何とか地元を元気にしたかった」。高岡コロッケをメニューに加えたのは、駅南を活性化させたいからでもあった。
 今年一月、高岡市の高の宮通りにお目見えした「コロッケ横丁」のにぎわいを知る長田さんは、高岡コロッケの取り組みが駅南にも広がることを期待する。「まだ観光客をもてなす店が少ない。例えば、コロッケの屋台を南口に開けば人を呼び込むきっかけになる」と話す。
 長田さんはフレンチの魅力が市民に十分伝わっているとはいえないと感じている。理由の一つに定番料理の不在があると見ている。例えば、イタリア料理といえばスパゲティだが、フランス料理に同様の料理はない。「高岡市民はコロッケを多く食べている。フレンチを知る切り口の一つとして取っつきやすい一品だと思った」と、長田さんは振り返る。
 高岡コロッケのすそ野は着実に広がっている。多彩な分野のプロが新たなコロッケを生み出せば、その魅力に厚みが加わるはずだ。

 第6部「昼も夜も」ではコロッケを使った新しい取り組み、楽しみを紹介する。

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