高岡コロッケ物語(51)
第5部・味なまち(1)
地下街駅地下再生へ夫婦で情熱
JR高岡駅の地下街に売り子の元気のいい声が響いた。毎週火曜と金曜に開かれている「えき地下夕市」である。昨年七月、にぎわい創出のため空き店舗に開設され、すっかり定着した。ブティックやカフェに並んで、五月からはコロッケを販売する店が二店に増えた。コロッケ人気の高まりで、駅地下の新しい名物になっている。
●出張販売に移行
夕市でコロッケを販売するのは、高岡市戸出地区の農産物加工グループ「なの花の里」と、同市樋詰の松田松一さん(69)、萬里子さん(65)夫婦である。なかでも松田さんは夕市開設時からの出店組で、固定客も多い。もともとは自宅前で店を開いていたが、数年前から出張販売に軸足を移した。イベントや朝市などに出店した方が、まとまった量がさばけ、店を構えて商売するより効率的と考えたからである。
夕市でのコロッケの販売は当初、芳しくなかった。しかし、「高岡コロッケ」の認知度が上がるのに伴い、売り上げが上向いてきた。「帰省する息子に食べさせたい」「友だちに贈るから、もう十個持ってきて」などの注文が寄せられ、品切れになる日も増えている。松田さんは四種類のコロッケに加え、大豆を使った新しいコロッケの開発に余念がない。萬里子さんは「高岡コロッケの広がりが商売に意欲を燃やす力になっています」と語る。
高岡駅に北陸初の地下商店街が誕生してから、四十年近くが経過した。かつては北陸随一のにぎわいとも言われたが、郊外への大型店の進出で沈滞し、往時の姿は見る影もない状態である。
第5部「味なまち」では、市内各地で現れてきた「高岡コロッケ」の反響や波及効果を紹介する。