高岡コロッケ物語(46)
第4部・地域まるごと(6)
昆布 多彩な具材、選ぶ楽しみ
高岡市の国道8号沿いにある道の駅「万葉の里高岡」で今月下旬、新作の「高岡コロッケ」が登場する。きざみ昆布を加えたジャガイモを具材に使用した「高岡こんぶコロッケ」で、富山県民の食生活に溶け込んだ食材である昆布を使うことで郷土色を打ち出す狙いだ。
●全国有数の消費量
昆布は江戸時代、北前船によって北海道からニシンなどの海産物と一緒にもたらされ、富山県内で食べられるようになった。昆布巻のほか、刺し身の昆布じめや昆布入りかまぼこなど多彩な料理や食品が生まれ、県内の消費量は全国トップクラスとされている。
昆布とコロッケの組み合わせを思い付いたのは、「万葉の里高岡」の運営会社「インサイト」(高岡市)で取締役を務める金子俊英さん(33)である。「高岡でしか味わえないコロッケを作りたい」。こう話す金子さんはこれまでも高岡大仏にあやかったジャンボサイズの「大仏コロッケ」、マスと酢飯の間にチーズを挟んだ「ますずしコロッケ」などアイデアコロッケを生み出してきた。大仏コロッケは日曜日になると約五百個売れる人気商品となっている。
もっとも、成功ばかりではない。これまでもサトイモやムラサキイモなど県内産の食材を使ったコロッケの開発に取り組んだが、材料の確保が難しいため店に出せる数量が限られたり、百円前後の価格を維持できなかったりと、販売の途中で断念せざるを得ないこともあった。
●地域色を常に意識
金子さんはコロッケに地域色を加えることを常に意識してきた。コロッケの概念から外れることなく、食材の特色を残しながらも、インパクトをいかに出すかに知恵を絞ってきたのである。料理のうまみを引き出す名脇役ともいえる昆布はまさにコロッケにはぴったりで、具材として自然に頭に浮かんだという。一年前から試行錯誤を繰り返し、ジャガイモと昆布の配合割合を工夫した結果、昆布のとろみが残る味わいに仕上げることができた。
金子さんは、小学生のころは週三回はコロッケを食べていた。コロッケは大好きだったが、いつも同じ味では飽きてしまうとの思いを抱いていたのである。「万葉の里高岡」には十五種類以上のバラエティーに富んだコロッケが並んでおり、夏に向けて四種類の新作の発売を予定している。「選ぶ楽しみがあれば、高岡コロッケの価値をもっと高めることができる」。金子さんらの開発は続く。