高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(29)

第2部・夢は揚げたて
人気の総菜(下) 消費者の厳しい目に応え

 富山県など北陸三県で食品スーパーを展開するアルビス(射水市)は、まちなかの精肉店などと同様、ほとんどの店で冷蔵のコロッケのタネを使って、揚げたてを総菜売り場に並べている。
 大量に扱うスーパー業界では、冷凍タネの使用が常識で、同社が冷蔵のタネにこだわる背景には、揚げ物の消費量が多い北陸、特にコロッケにうるさい富山の消費者の厳しい目がある。

総菜売り場には、揚げたてのコロッケが並ぶ=高岡市戸出町4丁目のチューリップ・ココウエスト店

●本物志向強い
 「高岡はじめ富山県では、コロッケに対しても本物志向が強い」と話すのは、同社惣菜課長の大沢淳子さん(47)である。コロッケの味の良しあしが、店の評判に影響することさえあるらしい。
 同社は一九九二年に卸の北陸スパー本部と小売りのチューリップが合併して誕生した。現在は直営の四十一店舗を含む約百店に、総菜調理の子会社であるアルデジャパン(同市)が製造したコロッケのタネを毎日、配送している。
 価格競争が激しいスーパー業界では、コスト管理が企業利益に大きく影響する。コロッケにかかるコストを小さくしたければ、大量生産で保存が利く冷凍ものを使うのが近道だ。揚げたてにこだわらなければ、店員の配置も少なくて済む。
 アルビスはもともと店ごとにコロッケのタネを調達していた。品質改善や安定供給のため、すべてを冷凍ものに切り換え、一括供給する手もあったが、消費者の意識の高まりに対応して、二〇〇〇年に本社横に惣菜工場を設置、新鮮さを重視した食材供給体制を整えた。大沢さんは「コロッケは最も重要な総菜で、手間暇かけることが、店の利益になると判断した」と説明する。

県内スーパーの総菜売り場は、揚げ物のスペースが大きい

●北海道産を使用
 手間暇をかけているのは、材料も同じだ。具材のジャガイモは北海道の羊蹄山周辺の契約農家で栽培する。社員が定期的に訪ね、コロッケに合う口当たりの良さなど品質面の希望も伝えている。
 総合企画課長の高橋徹さん(43)は「総菜売り場は、売る商品がなくなってもコロッケだけは切らすな、夜でも揚げたてを出せ、と指示している」と打ち明ける。
 冷凍ものと比べ、冷蔵のタネは揚げる時間が短くて済むため、衣が含む油の量が少なくなる。客から「しつこくなくて食べやすい」「手作り感がある」などと喜ばれる理由の一つだ。
 全国的にスーパーの総菜売り場は拡大される傾向にあるとされる。大沢さんによれば、揚げ物のスペースだけを取れば、県内のスーパーは首都圏のスーパーの十倍ほどもあるという。
 コロッケを高岡の名物にする取り組みは、おいしいコロッケが安く手に入ることが大前提だ。消費者の厳しい目が名物を創り出す。

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