高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(24)

第2部・夢は揚げたて
国際色 幅広い味で魅力アップ

 「高岡コロッケ」に国際色を加えているのが、高岡市あわら町のインド料理店「デリーあわら店」の野菜コロッケとチーズコロッケだ。

考案したインド風コロッケを持つハビブさん=高岡市あわら町

●エスニック風味
 見かけは普通のコロッケと変わらないが、中身は独特の香辛料が効いて、日本にはないエスニックな風味に仕上がっている。カレーライスと合わせて注文する客が多いが、コロッケだけを買いに来る人も増えてきた。
 同店がコロッケを作り始めたのは、昨年六月に高岡コロッケ実行委員会が発足して間もなくのことである。
 オーナーの早川久嘉さん(65)は「町おこしに協力したいと考えた。高岡らしいインド料理を作ってみたい気持ちもあった」と説明する。三年前には富山湾のブリを使ったスープカレーも考案しており、コロッケ作りも新しい献立の創作を目指す意欲の表れだった。
 インド風コロッケを考案した同店調理師のシェーク・ハビブさん(28)は来日して六年目になる。インド南部のコルカタ市の出身だが、カレーが国民的な人気を持つ日本に親近感を抱き、兄とともに日本にやってきた。

インド料理のスパイスを手に取る早川さん

●よく似た料理
 ハビブさんは「カレーだけでなく、コロッケの消費量も多いと聞いて、インドとの食文化の共通性を感じた」と語る。というのは、インドにもコロッケとよく似た家庭料理があるからだ。
 カレー粉や香辛料などで味付けしたジャガイモ、豆類を煮てつぶし、小麦粉の皮で包んで、油で揚げる。「サモーサ」「カキレッティ」などと呼ばれ、専門に扱う屋台が繰り出すほど人気がある。
 「国が違っても、おいしい揚げ物を好むのは同じなのかもしれない」とは、日本とインドの食を体験したハビブさんの直感的な食文化論だ。
 ハビブさんが作るチーズコロッケは、見た目にも鮮やかな緑色のホウレンソウとチーズが適度に混ざり、クミンパウダーやガラムマサラなどインドの香辛料が独特の香りを放つ。
 カレーコロッケも確かにうまいが、これは日本生まれ。ハビブさんのコロッケは本場のインド料理の片鱗をうかがわせて風格がある。
 インドは人口十一億の大国で、亜大陸と呼ばれるほど国土も広い。ハビブさんは「インド料理はカレーだけではない。地域や宗教による違いもある。食を通して文化や経済発展にも関心を持ってほしい」と語る。
 国技の大相撲では、かなり前からモンゴルやブルガリア、ロシアなどの外国人力士の活躍が目立ち、人気の掘り起こしにつながっている。日本の代表的な家庭料理のコロッケにも国際色があっていい。味の広がりは高岡コロッケに一層の魅力を加えるはずだ。

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