高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(22)

第2部・夢は揚げたて
地産地消(中) 氷見牛を丸ごと生かして

 肉質のきめ細かさと口の中で淡雪のように溶ける食感で知られる氷見牛は、完成度の高い食肉として注目されている。
 高岡市をはじめとする県西部地区にステーキ店や和食店などを展開する柿里(砺波市)は昨年五月、この氷見牛を使ったコロッケを考案した。丸ごと一頭分のうまみが詰まった一品は「高岡コロッケ」に味の厚みを加える一方で、その地産地消の可能性の大きさも示している。

肉牛としての完成度の高さで知られる氷見牛

●残さず使い切る
 「肉を残さず、何とか使い切れないのか」。氷見牛コロッケの開発は、社長の佐藤幸博さん(49)の一声から始まった。
 同社では氷見牛をステーキに使っているが、ステーキになる肉はヒレやロースに限られる。そのほかの部位は脂身が多かったり、肉質が固かったりして、ステーキに向かないからだ。
 そこで地元の食肉加工・卸業者の協力を得て、ステーキに使えないモモやバラ、腕や首などの肉をすべてミンチにしてコロッケの具材にした。「使わないからといって安易に処分していては、地元の生産者に申し訳ない」と佐藤さん。外食産業を営む者の責任感と言うべきか。
 通常のコロッケと作り方はほぼ同じだが、一個二百円とやや値が張る。一個の重さは約百十グラムあり、普通のコロッケより四割がた重い。肉の量もその分多くなっており、氷見牛ブランドの価値を思えば、納得できる価格とも言えそうだ。
 誕生した氷見牛コロッケを初めてほおばったのは、子どもたちだった。店で市販する前にまず、氷見市内の小中学校二十校の給食用に、佐藤さんが児童生徒総数と同じ四千百四十三個を無償で提供したからだ。

氷見牛の肉をふんだんに使った「氷見牛コロッケ」=氷見市の氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館

●飽きない味
 佐藤さんは「氷見と言えばキトキトの魚が有名だが、海の幸以外のふるさとの味も知ってほしかったから」と振り返る。子どもたちからは「ジューシーで軟らかい」「毎日食べても飽きないと思う」などの声が寄せられたという。
 氷見牛コロッケは、氷見市の氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館内の店でのみ揚げたてを販売する。一日に六十個前後、一カ月で約千八百個が売れる人気メニューだ。大和高岡店では冷凍で販売し、高級総菜として人気を集めている。
 同社は氷見牛を使ったハンバーグやレトルトのカレーも考案した。佐藤さんは「氷見牛は松阪牛に迫るほど優れた食肉だ。コロッケを含め、あとはいかに付加価値を高めていけるかにかかっている」と強調する。
 ともにブランド化を目指す高岡コロッケと氷見牛だけに、相性が良いのは当然かもしれない。

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