高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(9)

第1部・浪漫あり
ソースの唄(下) 地元食材で高岡らしさ

新しいソースがかかったコロッケを試食する従業員=高岡市横田町2丁目の山元醸造
ソースを製造する機械を点検する工場長の山本さん(手前)

 コロッケによる町おこしを目指して「高岡コロッケ実行委員会」が結成されたのは昨年六月。山元醸造は、この取り組みに歩調を合わせるように従来のソースをリニューアルし、新たに二種類のソースを開発した。合い言葉は「地産地消」。地元食材をふんだんに使った、高岡ならではのソースが誕生した。

●地産地消
 新しいソースを考案したのは、工場長の山本幸夫さん(57)、若手従業員の藤田知吉さん(28)、それに同社のホームページを担当する山本和代子さん(46)の三人だ。
 今から二年前の高岡味噌組合の会合で、町おこしの企画を打ち出せないかという声が上がったのがきっかけだった。それ自体は実を結ばなかったが、会合に出席した工場長の山本さんが高岡らしいソースのアイデアをひそかに構想しており、これを基に昨年九月、三人によるソース造りが始まった。
 消費者が好むソースの味は、食卓の洋風化とともに登場した昭和三十年代と現在とでは、いささか異なる。多くの日本人が甘い味付けを好むようになり、ソースも甘みが増しているという。
 例えば、コロッケもほんのり甘いカボチャコロッケやクリームコロッケの人気が高い。そうなると、具が甘くないコロッケの場合、ソース自体の糖度を上げて消費者の甘み志向にこたえる必要が出てくる。ほとんどの業者が発売当初の製品と比べ、二倍前後の量の砂糖を使っているとされる。

●自然な甘み
 「価格競争では大手に負けるに決まっている」。三人は地元食材の持つ自然な甘みでソースの個性を打ち出すことにした。
 考案した二種類のうち「とろまろ」と名付けたソースは、高岡市国吉地区で取れたリンゴを従来より十倍多く配合した。さらに富山市山田地域(旧山田村)で「医者いらず」として重宝された柿酢も加えた。
 発売前の社内の試食会では、従業員から「コロッケも地元の食材を使えば、もっとおいしくなるのでは」といった感想も聞かれた。三人は、地元産のソースとして認められたと感じた。工場長の山本さんは「コロッケにぴったりの特色ある風味を出すことができた」と満足気に振り返る。
 新しいソースは昨年十月の発売以来、順調に売り上げを伸ばしている。東京のラジオ番組にも取り上げられ、一日だけで五十件以上の注文があった。番組を聞いたという男性からは「高岡がんばれ。それが言いたかった」という電話もかかったという。
 高岡ゆかりの人だったのか。「高岡コロッケ」の存在感は、ソースがコロッケにしみ込むように確実に広がっている。

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